築年数が経過したマンションはどうなるか

国土交通省はマンションストック数の推移についてのデータを毎年公表しています。このデータによると、1968年時点の我が国のマンションストックの合計は53,000戸に過ぎませんが、翌年には77,000戸、2年後の1970年には134,000戸とストック数は急増していることが確認できます。68年から69年にかけては、それまでのマンションストックの4割近い22,000戸、1969年から1970年に書けては1年間で1968年時点のマンションストックを上回る57,000戸のマンションが供給されていることになります。

ところで、1968年築のマンションは今年で築後57年、3年後には還暦を迎えます。そしてその後は、還暦を迎えるマンションの数が急増するので、今後は高経年マンションの再生や終活について考える機会がより増えていくと思われます。

さて、「高経年マンションの終活」について社会的に大きく認識されたのは、滋賀県野洲の「廃墟マンション」と言われたマンションでした。

このマンションは、1972年竣工で、行政代執行で解体されたのは2019年でしたから、解体の時点で築後47年に過ぎませんでした。建築の専門家の人と話をすると、鉄筋コンクリート造の建物は100年以上は十分に利用できるという話もあるなかで、築後50年にも満たない建物がこの状態になっていることはショックでしたが、もともと管理不全であったことに加え、10年以上にわたり建物全体が空家だったということでしたから、劣化も早く進んでしまったのだと思います。

この「廃墟マンション」から学ぶべきことは、かなりの耐用年数があるはずのマンションも、管理不全が続くと劣化が進んでしまうことと、建物が廃墟化したときの解体責任は所有者にある点です。

ところで、現時点(2025年4月)の区分所有法には、「建替え決議」についての規定はありますが、「売却」や「解体」についての規定はありません。そのため、売却や建物の解体を進めるときは、区分所有者全員の同意が必要となります(なお、特定行政庁が、特定要除却認定したマンションについてはマンションの建替え等の円滑化に関する法律いより、マンション敷地売却決議をすることは可能です。ただし、特定要除却認定は単に築年数が経過しただけで受けることができるものではありません。)。

一方で、高経年マンションの数が急増する今後においては、マンションの再生のメニューを増やすことは急務です。そのため、国会では、区分所有法の改正を含めた「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法案」が国会で審議されています。

そこで、これから、建替えや売却を含めたマンションの終活と、法改正が終活等に与える影響について、このコラムにおいて考えてみたいと思います。



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2000年暮れから四半世紀以上にわたり数多くのマンション建替えや敷地売却の実務に携わった経験と、この過程を通じて知り得た管理や規約についての知見により、マンション再生はもとより管理について必要なコンサルティングをさせていただきます。

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